中退共・社内準備・企業型DC…どれを選ぶ?退職金制度のメリット・デメリット比較
はじめに:退職金制度の現状
本コラムでは、中小企業の退職金・退職年金準備の主な選択肢である「社内準備(退職一時金)」「中小企業退職金共済(中退共)」「企業型確定拠出年金(企業型DC)」の3つについて、その特徴とメリット・デメリットを整理します。
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、その名の通り「年金制度」の一つとして取り扱われています。ただし、受け取り方は年金形式(月々受給)だけでなく、一時金形式(一括受取)を選択することも可能です。そのため、従業員の選択次第では、従来の退職一時金と同じように受け取ることができる制度となっています。
現状の準備形態について、厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」をもとに概観してみましょう。 退職一時金の準備形態については、「社内準備」と「中退共」を活用した準備が概ね半々となっています。一方、退職年金については、従来の「確定給付年金(DB)」を「企業型確定拠出年金(DC)」が上回っている状況です。
| 退職一時金 準備形態(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 社内準備 | 56.5% |
| 中退共(中小企業退職金共済) | 42.0% |
| 退職年金 準備形態(複数回答) | 割合 |
|---|---|
| 企業型DC(確定拠出年金) | 50.3% |
| DB(確定給付年金) | 44.3% |
また、別の調査(令和5年度 企業型確定拠出年金実態調査結果)によると、企業型DCを退職給付制度の全部または一部として実施している企業は「70.8%」にのぼり、企業型DCが「退職金制度」のスタンダードとして広く受け入れられてきていることがわかります。
ここからは、それぞれの制度・準備方法についてメリット・デメリットを確認していきます。
選択肢① 社内準備・内部留保
会社が内部留保として資金を貯め、退職時に現金で支払う、最もシンプルな方法です。中小企業で最も一般的ですが、多額の現預金が必要になるリスクがあります。
【メリット】
• 柔軟性が高い: 外部機関への拠出する必要がないため、手元の資金を会社側でコントロールできます。
• 制度変更が比較的容易: 外部機関の規約や制限を受けにくいため、自社の規定改定のみで対応しやすい側面があります。※退職金規定改定の際に外部機関の影響は受けにくいですが、不利益変更とならないよう事前の制度設計や従業員説明の実施など、丁寧な対応は必要です。
【デメリット】
• 税制面でのメリットが薄い: 退職金として支払うまで(積み立てている段階では)損金算入できないのが一般的です。積立金については課税後の資金で積み立てる必要があります。
• 資金繰りのリスク: 団塊ジュニア世代の定年や、予期せぬ退職者が重なった場合、多額の退職金支払いが発生し、経営を圧迫するリスクがあります。
選択肢② 中小企業退職金共済(中退共)
独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営する、中小企業のための国の退職金制度です。掛金の一部助成があり、外部積立により確実に資金確保できるため、従業員30~99人規模の企業では48.5%と利用率が高まります。
【メリット】
• 管理が楽で安心: 掛金は全額損金算入でき、管理・運用は独立行政法人勤労者退職金共済機構が行います。国が運営する制度であるため、安心感があります。
• 掛金の助成: 新規加入時などに国からの掛金助成を受けられる場合があります。
※中退共の掛金助成の例(2026年2月現在)
・新規加入助成: 新たに加入する事業主に対し、掛金の2分の1(従業員1人につき上限5,000円)を加入から1年間助成。
・月額変更助成: 掛金月額を増額(例:10,000円→12,000円)する場合、増額分の3分の1を1年間助成
【デメリット】
• 制度の硬直性: 掛金の減額には従業員の同意が必要など、要件が厳格です。
• 運用の限界: 利回りが固定的であり、インフレ局面では資産の実質価値が目減りするリスクがあります。
選択肢③ 企業型確定拠出年金(企業型DC)
会社が掛金を拠出し、従業員自身が運用を行う制度です。近年、導入企業数が急増しています。受取時は年金または一時金を選択することが可能です。
【メリット】
• 税制/社会保険料面での優遇: 掛金は全額損金扱いとなり、運用益も非課税です。また選択制(給与切り出し制)を採用する場合は、企業側・従業員側の社会保険料を見直すことも可能です。
• 会社の追加負担なし: 確定給付(DB)とは異なり、運用結果による不足額を会社が穴埋めする必要がありません。
• ポータビリティ(持ち運び): 従業員が中途入社あるいは転職する際、資産を転職先の企業型DCやiDeCo(個人型)に非課税で持ち運べます。人材流動化時代に即した制度です。
【デメリット】
• 元本変動リスク: 運用結果は従業員の自己責任となります。元本割れのリスクもあるため、制度導入時には従業員への丁寧な説明が必要です。
・引き出し年齢:老後の資産形成が目的であるため、原則として60歳になるまで積立金を引き出すことができません。
• 投資教育の義務: 導入企業には従業員への投資教育(継続教育)が義務付けられています。せっかく導入した制度を形骸化させないためにも、また従業員の満足度を高めるうえでも、企業側が積極的に情報提供することが必要です。
・コスト面:導入時の初期費用と、毎月の制度管理費用が発生します。企業型DC導入後は原則として制度を廃止することができませんので、導入に当たっては制度を継続させることができるのか、十分にシミュレーションを行うことをおすすめします。
まとめ:自社のスタンスに応じた選択
最後に、それぞれの制度がどのような企業に向いているかを整理します。
| 重視するポイント | おすすめの選択肢 | 理由 |
|---|---|---|
| ・手元資金の自由度 | ① 社内準備 | 外部に資金を固定したくない、少人数の場合。ただし税効果は低い。 |
| ・事務の簡易さと安定 ・コスト面 | ② 中退共 | 運用リスクを避けたい、事務負担を最小限にしたい場合。 |
| ・財務の効率化と採用力 ・役員の退職金準備 ・資産形成 | ③ 企業型DC | 全額損金で効率よく積立しつつ、従業員・役員の資産形成を支援し、「福利厚生が手厚い会社」としてアピールしたい場合。 |
近年では、これらを組み合わせる(例:中退共をベースにしつつ、上乗せ部分として選択制DCを導入する)ケースも増えています。
また、企業型DCでは月々の総支給額を変えないかたち(選択制DC)で、掛金を積み立てる制度設計も可能です。会社として新たな退職金原資を捻出する必要がないため、資金面の負担を抑えつつ、役員・従業員の皆さんの資産形成を支援する設計が可能となります。
ぜひ、貴社の状況・理念に即した制度活用をご検討ください。
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