【助成金】予算概算要求から見る令和8年度の助成金動向〜社労士が解説する実務ポイント〜
毎年秋に発表される厚生労働省の「予算概算要求」は、翌年度の雇用関係助成金のトレンドを占う重要な先行指標となります。人材不足が慢性化する中、採用力強化や従業員の定着支援に活用できる助成金も提供されている状況です。ただ「どんな助成金があるのだろうか?」「自社は活用できるのか?」という疑問を持たれている企業様も多いかと思います。
本コラムでは、昨年発表された予算概算要求の資料をもとに、令和8年度(2026年度)に向けた助成金の動向と、実務上の注目ポイントを社会保険労務士の視点から解説いたします。来年度へ向けた情報収集の一環としてお役立てください。
※本記事の内容はあくまで「予算概算要求段階」の情報に基づくものです。今後の国会審議等により、制度内容や要件、支給額が変更となる可能性がある点にご留意ください。
1. 令和8年度の注目助成金ピックアップ
概算要求の中から、特に3つの助成金について、想定される変更点やポイントを整理しました。
① キャリアアップ助成金
非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善を支援する本助成金は、概算要求額が前年度とほぼ同水準となっており、来年度も重要な柱として継続される見通しです。
• 正社員化コース(加算の新設):本コースにおいて、新たに「非正規労働者の情報開示加算(1事業所あたり20万円)」が設けられる方向で検討されています。どのような情報開示が求められるか、今後の詳細発表が待たれます。
• 短時間労働者労働時間延長支援コース:令和7年度から創設されているコースです。パート従業員の労働時間延長や賃金増額を行い、新たに社会保険に加入させた事業主を支援するもので「1人あたり最大75万円」の助成額となっています。
知名度はまだ高くないものの、学生アルバイトや扶養内で勤務しているパートスタッフなどの定着や、人手の確保という観点から引き続き注目の助成金となっています。
② 人材開発支援助成金(リスキリング支援など)
従業員のスキルアップやDX推進を支援する助成金です。全体の予算規模としては微減傾向にあるものの、「人への投資」は国策として依然重視されています。
• 事業展開等リスキリング支援コース(設備投資助成の新設):事業展開等リスキリング支援コースにおいて、大きな変更が予定されています。対象となる研修を実施した後、生産性向上のための機器を購入した場合に、その費用の50%(上限150万円)を助成する枠組みが新設される見込みです。「社員教育」と「設備投資」をセットで進められるため、活用の幅が大きく広がりそうです。
• 個人向け給付との連動:国は従業員個人の自発的な学び直し(教育訓練給付等)も推進しています。会社主導の研修とともに、個人の学び直しを支援する社内制度(休暇の付与や費用補助など)を構築することが、今後の人材定着において重要になりそうです。
③ 早期再就職支援等助成金
労働移動の円滑化と賃上げを連動させる施策として、予算拡充が要求されています。
• 中途採用拡大コース:中途採用者の賃金を、前職の賃金と比較して「5%以上アップ」させて採用した場合、1人あたり20万円が助成される枠組みが想定されています。キャリアアップ助成金の対象とならない中途採用活動などで、賃上げを伴う採用を行う際の活用が期待されます。
2. 来年度へ向けて企業が今から準備すべきこと
助成金は、「申請したい」と思い立ったその日にすぐ手続きを進められるものではありません。多くの助成金では、まず事前に「計画の作成・提出」を行い、その計画に沿って正社員化や社員教育などの施策を実行するという段階的な手順を踏む必要があります。
さらに重要な点として、これらの施策を講じる前段階として「適切な労務管理」が機能していることが大前提となります。「労働条件通知書の作成」「就業規則の整備」「正確なタイムカード等の勤怠管理」「残業代の適正な支払い」といった基本が整っていなければ、受給要件を満たすことはできません。
年々、助成金のルールは複雑化していますが、要件を一つずつ確認し、正しい手順で対応を進めれば着実に受給へと繋げることが可能です。助成金をもらうためだけに無理な社内ルールを作ることは本末転倒ですが、自社の方向性とマッチする制度をうまく活用できれば、会社を成長させる強力な支援策となり得ます。
来年度、助成金を活用していくために、まずは以下の準備から始めておくことをお勧めいたします。
- 自社の課題の棚卸し 「賃上げが必要か」「人材育成(リスキリング)を進めるか」「多様な働き方の整備が必要か」など、自社が優先すべき人事課題を明確にしておくことが、最適な助成金を選択する第一歩となります。
- 社内規程(就業規則・賃金規程)の点検 助成金の審査では、労働基準法等の法令遵守はもちろん、助成金の要件に合致した就業規則や賃金規程が整備され、実態として正しく運用されているかチェックされます。現行の規程に曖昧な点がないか、あるいは整備が十分でない点がないか、専門家を交えて点検しておくことが有効です。
- 日々の労務管理の徹底 労働条件通知書の適切な交付、正確な労働時間の把握、賃金台帳の整備といった日々の労務管理が、助成金申請の重要な土台となります。
まとめ:最新動向を注視し、計画的な制度設計を
令和8年度の助成金は、引き続き「賃上げ」「リスキリング(人材育成)」「多様な働き方の推進(両立支援)」が大きなキーワードとなりそうです。
制度の正式な要件や施行時期は今後の予算成立を待つこととなりますが、方向性をいち早くキャッチし、社内の受け入れ体制や規程の整備を前倒しで進めることが、助成金を活用するための鍵となります。弊所でも逐一情報提供を行っています。是非定期的に☑してみてください。
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