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【人材派遣】人材派遣業の労務年間スケジュールを社労士が解説!労使協定締結からマージン率公開まで。

人材派遣業における労務管理は、一般的な企業で求められる手続きに加え、「労働者派遣法」に則った適正な履行が求められます。そのため、他業種と比較して業務量が多く、専門性が高いという特徴があります。

毎月の給与計算や頻繁な入退社手続きと並行しながら、複雑な法改正対応や行政への定期的な報告業務を滞りなく進めることは、派遣元企業にとって大きな負担と言えます。

本コラムでは、人材派遣会社における実務上必須となる労務管理業務を「年間スケジュール」として時系列で整理し、解説いたします。次年度に向けた自社の管理体制の抜け漏れチェックや、労務体制の整備にぜひお役立てください。

■ 【図表】人材派遣業の労務年間スケジュール全体像

まずは、年間を通じて発生する主要な労務イベントの全体像を把握しましょう。

時期発生する主な労務業務対象・期限など
4月~5月労使協定方式の協定締結年度開始前まで
36協定の更新・締結年度開始前まで
有料職業紹介事業報告書4月30日まで
障害者雇用納付金の算定・納付5月(納付は5/15まで)
6月~7月労働者派遣事業報告書・マージン率公開6月30日まで
労働保険の年度更新7月10日まで
社会保険の算定基礎届(定時決定)7月10日まで
障害者・高年齢者雇用状況報告(ロクイチ報告)7月中旬まで
秋・冬最低賃金改定への対応秋以降(都道府県による)
年末調整年末
通年・随時定期健康診断・ストレスチェック随時
給与計算・入退社手続き随時

1. 春の業務(4月~5月):派遣法特有の労使協定対応と各種報告・納付

1-1. 労使協定方式の協定締結(~年度開始前)

2019年の同一労働同一賃金制度の導入以降、派遣スタッフの待遇決定方法は「労使協定方式」か「均等・均衡方式」のいずれかを採用することが義務付けられました。実態として、約9割の派遣元企業が自社の裁量を持ちやすい「労使協定方式」を採用しており、派遣業経営における必須業務となっています。

【労使協定締結の実務フロー】

  1. 「局長通達」の確認:毎年厚生労働省から発表される最新の統計データを確認します。
  2. 労使協定書作成:統計データと同等以上の賃金となるよう自社の賃金テーブルを作成します。
  3. 締結・周知:過半数代表者を選出し、協定を締結した上で従業員へ周知します。

留意点として、通達には以下の2種類の統計データが示されており、自社の状況に適したものを選択する必要があります。

統計データの種類特徴と基準となるデータ
賃金構造基本統計主に大企業の賃金データを反映した統計
職業安定業務統計ハローワークの求人データを反映した統計

1-2. 36協定の更新・締結における派遣特有の注意点(~年度開始前)

36協定は雇用元である派遣元企業で締結しますが、派遣スタッフの「労働時間管理」の責任は「派遣先」に課されています。

  • 派遣先への通知・展開が必須:派遣元で締結した協定内容(時間外労働の上限など)は必ず派遣先へ通知し、派遣先社内で管理してもらう必要があります。
  • 派遣先への展開にかかる時間も考慮し、早めの対応を進めましょう。

1-3. 有料職業紹介事業報告書の提出(~4月30日)

多くの人材派遣会社は、有料職業紹介(人材紹介業)の許可も取得しているかと思います。職業紹介の許可を取得している場合は毎年、前年度の実績を報告する必要があります。

  • 実績ゼロでも提出必須:前年度に人材紹介の実績が「0件」であったとしても報告書の提出は必須です。
  • 6月に提出する「労働者派遣事業報告書」とは別の書類となるため、失念にご注意ください。

1-4. 障害者雇用納付金の算定・納付(~5月15日)

現在、常用労働者数が100名を超える企業が納付金制度の対象となっており、法定雇用率に達していない場合は障害者雇用納付金の支払い義務が生じます。

  • 算出実務の難しさ「登録型派遣」を行っている場合、労働者数や障害者雇用数の算出方法が特殊です。計算ミスによる過少納付が発覚すると10%の追徴金が課せられるリスクがあるため、正確な集計が求められます。
  • 今後の制度改正:2026年2月現在、今後「100名以下の企業へ対象が拡大される」という議論が開始されています。現在は対象外の企業様も今後動向を注視しておく必要があります。

2. 夏の業務(6月~7月):労働者派遣事業報告書と定例業務の集中

2-1. 労働者派遣事業報告書&マージン率等の情報公開(~6月30日)

労働者派遣業の許可を取得している企業は、企業規模にかかわらず、前年度の実績を集計した「労働者派遣事業報告書」の提出が必要です。
また、提出時は添付書類として複数の書類が必要ですので合わせて対応を進めます。

  • 独自の集計内容:教育訓練の実績や雇用安定措置の実施状況など、派遣法に基づく集計が求められます。
  • 添付書類:「労使協定方式採用時の労使協定書」「労働者派遣事業収支決算書」「関係派遣先派遣割合報告書」
  • マージン率の常時公開:現在はインターネット上での情報公開が常時義務付けられています。事業報告書作成と同時にデータ整理を行い、自社HPや「人材サービス総合サイト」へ掲載する業務フローを構築しておきましょう。

2-2. 【法改正対応】女性活躍推進法に基づく情報公表

現在、101名以上の企業には「1項目の情報公表義務」がありますが、法改正により2026年4月からは以下の3項目の公表が義務化されます。

  • 男女の賃金差異
  • 女性管理職比率
  • その他1項目

対象となる101名以上の企業様は、来年度に向けてデータの集計方法を確定させるなど、準備を進める必要があります。

2-3. 夏の定例労務業務(全業種共通)

7月は定例業務が集中するため、派遣特有の業務と並行したスケジュール管理が求められます。

業務名提出期限内容
労働保険の年度更新7月10日まで労災保険・雇用保険の保険料の申告・納付
社会保険の算定基礎届7月10日まで1年間の社会保険料を決定するための手続き
障害者・高年齢者雇用状況報告7月中旬まで通称「ロクイチ報告」。雇用状況の報告義務

3. 秋・冬の業務:最低賃金改定への対応と年末調整

3-1. 最低賃金改定と「派遣料金交渉」への活用(秋以降)

秋以降は、都道府県ごとに異なる最低賃金の改定への対応が必須となります。例年8月末頃にはその年の最低賃金改定が確定します。2026年現在、毎年のように大幅な最低賃金引き上げが実施されていますので、派遣スタッフの賃上げと合わせて、派遣料金の値上げ交渉も合わせて進めていく必要があるでしょう。

  • エリア管理の徹底:派遣スタッフの就業先が複数の都道府県にまたがる場合、「何月から賃上げを実施するか」というエリアごとの詳細な管理が必要です。
  • 派遣料金の値上げ交渉:スタッフ給与へ反映させるだけでなく、その賃金上昇分を根拠として「派遣料金の値上げ交渉」へ積極的につなげていくことが重要です。

3-2. 年末調整(年末)

派遣スタッフの就業先が多岐にわたるケースが多く、扶養控除申告書の配布や回収に時間を要しがちです。スケジュールに余裕を持ち、早めのアナウンス対応を進める必要があります。

4. 通年・随時の業務:安全衛生管理

4-1. 健康診断・ストレスチェックの実施義務

派遣社員であっても、以下の要件を満たす場合は、企業側に定期健康診断およびストレスチェックを実施させる義務が発生します。

  • 対象要件
    • 「無期雇用 または 1年以上の雇用見込みがある」こと
    • かつ「所定労働時間がフルタイム労働者の3/4以上」であること

人材派遣業界は勤務地や時間が多様なため受診管理が煩雑になりがちですが、健康志向の高まりもあり丁寧な対応が求められます。

4-2. 【2028年義務化方針】ストレスチェックの全事業所展開を見据えて

ストレスチェックについては、令和10年(2028年)までに「50名未満の事業所を含む、全事業所で実施を義務化」する方針が示されています。
ストレスチェックは、個人情報保護の観点・産業医の対応が必要などの観点からも、社内内製化のハードルが高いといえます。実務上は、WEB上で完結する外部サービスを活用いただくことをおすすめいたします。

まとめ:定期的に業務プロセスの見直しを

人材派遣業は、派遣スタッフの数に比例して管理業務が肥大化・複雑化します。日々の給与計算や入退社手続きと並行して、これだけ多岐にわたる年間スケジュールをこなすのは至難の業です。

派遣スタッフの稼働数が増加している企業様や、労務担当者の交代などを控えている企業様は、これを機に自社の業務プロセスを一度整理・見直し、体制の強化を図ることをお勧めいたします。

対応エリア:兵庫県三田市を中心に、宝塚市、西宮市、伊丹市、川西市、丹波篠山市、丹波市などの阪神間エリア、および神戸市の企業様をメインにサポートしています。オンラインツールを活用し全国対応もいたします。

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