<派遣元向け>契約終了後の派遣スタッフの社会保険、継続と喪失の判断基準を社労士が解説


こんにちは、社労士事務所ココットの角です。

派遣会社の労務管理において、派遣スタッフの入退社手続きは日常的な業務ですが、「派遣契約が終了した後の社会保険の取り扱い」は判断に悩む点ではないでしょうか。

人材派遣業界には、他業種とは異なる特有のルールが多数存在します。特に登録型派遣(有期雇用)のスタッフが多い場合、契約の「切れ目」での社会保険の取り扱いは適切に対応すべきポイントです。

もしこの対応を誤ると、派遣スタッフに国民健康保険への切り替えなど不要な手間や金銭的負担をかけてしまい、貴社への信頼を損ねる原因にもなりかねません。

今回は、派遣スタッフの契約期間が終了した際の社会保険手続きについて、無期雇用・有期雇用のケース別に、正しいルールを詳しくおさらいします。


ケース1:無期雇用派遣スタッフの場合

まず、派遣スタッフが貴社と「無期雇用契約」を結んでいる場合(いわゆる常用型派遣)です。

このケースでは、派遣先A社との派遣契約が終了し、次の派遣先B社での就業まで空白期間が発生したとしても、貴社とスタッフとの間の雇用契約は継続しています。

したがって、社会保険の被保険者資格も当然に「継続」となります。空白期間中であっても、資格を喪失させる手続きは必要ありません。これは基本的なルールとして押さえておく必要があります。


ケース2:有期雇用派遣スタッフの場合(次の派遣先が決定済み)

次に、多くの派遣会社で主流である「有期雇用契約」のスタッフ(いわゆる登録型派遣)の場合です。

有期雇用の場合は、派遣契約の終了が雇用契約の終了と連動していることが多く、原則としては社会保険の資格も喪失します。

しかし例外があります。 契約終了時に、すでに次の派遣先が具体的に決まっている場合は、一定の要件を満たせば、使用関係は実質的に継続しているとみなされ、社会保険を「継続」する取り扱いとなります。

  • 要件①: 前回の契約終了後、1ヶ月以内に次の派遣契約が開始されることが内定している。
  • 要件②: 新たな派遣契約(雇用契約)が1ヶ月以上見込まれる。
  • 要件③: 新たな契約内容が、所定労働時間・日数などで社会保険の加入基準(例:週20時間以上等)を引き続き満たしている

これらすべてを満たす場合は、資格喪失の手続きは不要です。


まとめ:正しい知識が派遣スタッフの信頼と、社内の業務効率を守る

今回は、派遣契約終了後の社会保険の取り扱いについて解説しました。特に有期雇用のスタッフの場合、「次の仕事が1ヶ月以内に決まっているか否か」で手続きが大きく変わることをご理解いただけたかと思います。

もし、本来は継続できるケースにもかかわらず、一律に「契約終了=資格喪失」として処理してしまうと、どうなるでしょうか。

派遣スタッフご自身は、契約の切れ目(例えば1週間)のために、わざわざ役所に行って国民健康保険の加入手続きをし、保険料を支払い、次の就業が決まったらまた脱退手続きをする…という非常に大きな手間と金銭的負担を強いられます。これでは、スタッフの貴社への信頼感(=定着率)は大きく損なわれてしまいます。

また、派遣スタッフの入退社が重なる繁忙期には、「次の派遣先が決まっていたのに、営業担当と労務担当の連携ミスで喪失処理をしてしまった」という事態も起こりがちです。

派遣スタッフのロイヤリティを高め、社内の業務を効率化するためにも、正確な知識の把握と、部門間(営業・労務)の連携フロー構築が不可欠です。


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